反省した夜。

11月はえびす講がこの町では行われる

僕はちょうどその頃産まれた。

寒い時期が始まる頃で自分の誕生日が来ると

毎年 えびす講と冬の訪れを感じている。

自分の町では毎年の行事で 当たり前になっていたから

いつの間にか えびす講にも足が向かなくなっていた

高校生の頃好きな子を誘って行ったのが最後になるだろう

自分の誕生日も重なるから なおさら楽しかった気がした 笑

寒いから手を繋ぐ口実になったり 人混みの中だから相手に寄り添いやすくて

なんだか嬉しくて、楽しくて…

あの頃11月が毎年 待ち遠しかった

僕は青春していたのだ。

それから月日が経ち

奥さんと結婚して彼女がこの町にきてくれて

また 僕はえびす講に行くようになった

僕の奥さんは、素直に楽しいとか悲しいとかが感じられて、表現できる人だ。

僕はそれが出来ない人間だ

彼女は 僕には出来ない事を持っている人で

そんな奥さんがいるのでいつの間にか行かなくなっていた

えびす講と僕の誕生日も毎年の行事に我が家では組み込まれるようになった。

本当は嬉しいのだが 素直に喜ばない自分がいて…

ダメな奴だ。

今年はニコを連れて初めて えびす講に行った

奥さんとニコは楽しそうだった いろんな露店が出ていて、賑やかで 活気あって…

ニコは見るのも見るものみんな 食べたがって欲しがっていた。

だけど、僕はそれをみんな ダメだと言って 人混みが嫌で先を急いで

いつの間にか急ぎ足で帰ってきてしまった…

帰りの車の中でもっと えびす講を二人に楽しませてあげれば良かったと反省しながら後悔していた。

典型的なダメな父親で夫である

高校生の頃だったら もっと楽しんでいられたのに…笑

次の日の朝

ニコが僕に 言った

綿あめ 食べたかったと…

何気なく言われたが、心に残った

ニコが保育園に行った後 奥さんに言われた

「ニコとの時間をもっと楽しんだ方がいいと」

先を急いで帰るし、全く楽しそうじゃなかったと…

ニコには全てが初めてで いろんな事が楽しく感じていたのに

いつの間にか 僕が急ぎ足で手を引いて何にも見せずに帰ってきてしまっていた。

僕は落ち込んだ

綿あめも、くじ引きも射的も チョコバナナも、たこ焼きも。

子供の頃、僕が楽しかった すべての事を

僕の感覚の慣れで時間だけを過ごしていて

ニコの目線では全く見てあげる事が出来なくなっていた。

僕は奥さんに素直に謝れなかった…

僕が一番分かっていたからだ。

来年までえびす講は来ない。

来年は今より ニコには大きくなって 今より感動は薄れるかもしれない。

そして、あと何回えびす講に一緒に行ってくれるだろうか 笑

自分の人生の中で 家族と過ごす時間や、娘がいてくれる事で考えさせられた事がすごく大事だと思うようになった。

そして、奥さんがいてくれる事で、僕がどれだけいろんな事を学ばせて助けてもらっているだろうか。

全て 感謝しなければいけない事だ。

僕を含め 世の 男性と夫達よ

素直にダメな事をダメだと受け入れる事や、楽しい事や悲しい事を

素直に表現する事はとても大切な事である

そうでなければ、娘にも 妻にも 彼女にもモテない

無口で無愛想な男などが良かった時代は終わったのだ

青春を過ごしたあの時の気持ちと、子供の頃の好奇心はいつになっても 持っていなければいけない 笑

僕は、こんなダメな父で夫のそばにいてくれる 奥さんと娘を ずっと大切にしていこうと思う…

43歳になる夜 冬の始まりに感じた事だった。

父と夫頑張ります!

+2988